こんにちは、キャル株式会社のげんた(@genta_cal)です。
みなさまは、「受託開発」や「請負開発」という言葉をご存じでしょうか?
どちらもシステム開発をおこなう際に外部の会社へ依頼することを指します。
システム開発を外部の会社へ依頼する上で、目的に合った成果を得るためには「受託開発」と「請負開発」の契約形態の違いを理解することが非常に重要です。
受託開発と請負開発には、契約の流れ・責任範囲・開発業務への関わり方に違いがあり、発注・依頼する企業側のメリット・デメリットも異なります。
例えば、要件が曖昧で柔軟な対応を必要とする場合は「受託開発」、“成果物の納品”と目的が明確な場合は「請負開発」が有効です。
本記事では、受託開発と請負開発それぞれの特徴や違い、メリット・デメリット、依頼時の注意点や流れを詳しく解説します。
システム開発を外部会社に依頼しようとしていて、「うちにはどちらの契約形態が適している?」と迷っている企業担当者さまは、ぜひご一読ください。
受託開発と請負開発の違いの前に基本概念を解説
まずは「受託開発」と「請負開発」の基本概念を解説します。
両者について知識が曖昧な方は、活用する際に困惑しないためにも、それぞれの特徴をしっかり理解しておきましょう。
受託開発とは?
「受託開発」とは、システム開発業務を外部の開発会社に委託し、その業務を開発会社が引き受ける形態のことを指します。
法律上は委任契約(または準委任契約)にあたり、完成品の納品義務が明確な請負契約とは異なります。特徴は、発注・依頼元の企業が開発会社のシステムエンジニアなどに指示を出しながら業務を進めてもらう点です。
受託開発では、依頼元企業が要件を提示し、それに基づいて依頼を受けた会社が作業をおこないます。開発会社のエンジニアが依頼元企業に常駐するケースもあるため、細かな仕様変更や調整がしやすいです。
また、業務の一部だけを委託することも可能で、自社内のリソース不足を補う手段として活用するケースも少なくありません。
すべてを依頼するのではなく、業務の遂行を委任する形でプロジェクトを進めることも可能なため、進行状況を把握しながら適宜指示を出したい場合に適している契約形態です。
請負開発とは?
「請負開発」とは、システム開発業務において、依頼元企業が定めた要件定義に基づき開発会社が完成品を作成して納品する契約形態です。
請負契約では業務の進め方や工程管理は開発会社の責任となり、依頼元企業は成果物に対して対価・報酬を支払います。Webシステムや業務アプリケーションの開発を外注する際に重宝し、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環として多くの企業に活用されています。
請負開発の特徴は、明確な納期と成果物が定義されている点です。社内にIT人材が不足している場合は、外部の技術力を活用しながら効率よく開発を進められるでしょう。
派遣のようにエンジニアが常駐しないため管理コストも軽減できることから、システム開発を外部に丸投げしたい場合に適している契約形態です。
受託開発と請負開発の違いは何?契約形態や業務の責任範囲の違いを解説
ここまでは受託開発と請負契約の基本概念を解説しました。
続いては、受託開発と請負開発の「契約形態の違い」と「責任範囲の違い」を解説します。
契約形態の違い
システム開発を外部に依頼するにあたって、受託開発と請負開発の「契約形態」の違いを理解しておくことが重要になります。
受託開発は依頼元の要望に基づいて業務を進める委任型であり、契約内容に従い柔軟に対応できるケースが多いです。
一方、請負開発は成果物の納品を目的とした契約であり、あらかじめ合意した仕様通りに納品することが求められるため、発注後の仕様変更は難しいです。
同じ開発業務であっても契約形態が異なることから、トラブルの要因になるケースもあります。そのため、契約を締結する際は目的や責任分担を明確にすることが必要不可欠です。
受託契約と請負契約では合意事項が大きく異なりますので、発注前に契約形態の違いをしっかり確認しておきましょう。
業務の責任範囲も異なる
受託開発と請負開発では「責任範囲」にも明確な違いがあります。
受託開発では、開発会社と連携しながらプロジェクトの進行管理も担い、個人やチーム単位で業務を対応するケースが多いため関係が密になります。
一方、請負開発は納品物の完成を目的とし、納品後の不具合などに対する責任は契約で定められた義務範囲に限られるのが一般的です。
そのため、例えば基幹システムなど企業に深く関連する開発では、どちらを選ぶかでリスク管理の方法も変わってきます。
複数の開発会社と関わるようなプロジェクトでは特に注意が必要で、トラブル防止のためにも契約時に責任範囲を明確にすることが重要です。
受託開発や請負開発を発注・依頼する企業側のメリット
ここまでは、受託開発と請負開発での「契約形態」と「責任範囲」の違いについて解説しました。
続いては、受託開発と請負開発それぞれのメリットを紹介します。
3つずつ紹介しますので、発注・依頼する際に「どんなメリットがあると良いのか?」がわからないときは参考にしてください。
受託開発のメリット1.コスト管理しやすい
受託開発のメリットの一つ目は、コスト管理がしやすいことです。
企業がシステム開発を依頼する場合、開発業務の範囲や内容に応じた契約ができます。
受託では作業時間や対応業務に応じて報酬を設定することが多いため、実際の対応業務に基づいて費用を支払う形になります。これにより、プロジェクトの途中で仕様変更が生じた場合でも、柔軟に対応しつつ予算内で調整がしやすいです。
よって、限られた予算内で効率的に開発を進めたい企業にとって、受託開発はコストコントロールに優れた選択肢と言えるでしょう。
受託開発のメリット2.開発工数を削減できる
開発工数を大幅に削減できる点もメリットです。
システム開発を社内で進める場合、要件定義・設計・実装・テストなど多くの業務が発生し、それらを管理するための人材や時間が必要になります。
しかし、受託開発ではこれら全てを外注できるため、社内のITエンジニアのリソースを他の重要業務に集中させられます。
経験豊富な人材が代わりに業務を担ってくれることで、開発にかかる工数を少なくし、結果としてコスト削減にもつながるでしょう。
特に、社内に十分なITエンジニアがいない企業や、一時的なプロジェクトでの対応が必要なケースでは、受託開発の依頼は非常におすすめの選択ですので、効率よくシステム開発を進めたい企業には大きなメリットと言えます。
受託開発のメリット3.継続的なサポートを受けられる
継続的にサポートを受けられる点もメリットです。
外注に依頼する際、単にシステム開発だけでなく、その後の運用・保守・機能追加など継続的なサポートを受けられるケースがあります。
受託会社は他の開発時に得た知識やノウハウを蓄積しているため、システムの動作やセキュリティに関する課題にも迅速かつ専門的に対応可能です。特に、社内にIT人材が少ない企業では、継続的にサポートを受けられることで問題発生時にもスムーズに仕事を進めることができ、結果として効率的な運用がおこなえます。
また、受託開発は業務を理解した上で対応してもらえるため、将来的な改善提案や技術支援にも期待が持てます。システムの完成後も信頼できるパートナーとして長く関係を築ける点が、受託開発を活用するメリットと言えるでしょう。
請負開発のメリット1.管理業務をおこなう必要がない
請負開発のメリット一つ目は、発注・依頼する企業側が管理業務をおこなう必要がない点です。
請負契約では、発注したシステム開発を受注会社が一括して請け負い、進行管理・スケジュール調整・品質管理なども含めて責任を持って対応してくれます。そのため、社内でプロジェクトを細かく管理する時間や人材を確保する必要がなく、本来のコア業務に集中することが可能です。
また、開発に関するノウハウや体制が整った会社へ依頼することで、効率的かつ一定水準以上の成果が期待できます。特に、IT人材が不足していたり、社内に開発の専門部署がない企業にとっては、請負開発は非常に有効です。
請負開発では管理工数を大きく削減でき、目的に沿ったシステムを安心して任せることができるでしょう。
請負開発のメリット2.専門知識やノウハウの活用
専門知識やノウハウを活用できる点も請負開発のメリットです。
請負ではシステム開発を一括して外部の会社に依頼し、要件に応じたWebサービスや業務用ソフトウェアなどの制作を進めてもらいます。このときに、依頼先の会社が持つ高い技術力や蓄積されたノウハウを活用できるのが大きな強みです。
特にシステムの仕組みが複雑な場合や、業務課題に応じた作業が必要な場合は、自社内の人材だけでは対応が難しいこともあります。
請負会社であれば、さまざまな業界や開発範囲に対応した実績を持ち、専門性の高い知識を活かして課題解決へ導いてくれるため安心です。
システム開発の要件をしっかり理解した上で対応してくれるため、プロジェクトの成功率も向上します。専門性の高い業務にこそ、請負開発は大きなメリットと言えるでしょう。
請負開発のメリット3.高品質の成果物が期待できる
高品質の成果物が期待できる点もメリットと言えます。
請負契約は、発注側が求めるシステムやサービスの目的や機能に応じて、開発会社に成果物を納品してもらう形態です。
請負を専門とする開発会社はさまざまな事例や技術を活かした仕組みづくりに強みを持っており、課題に応じて最適なシステムを構築してくれます。業務効率化やサービス改善といった目的に沿って必要な機能がしっかりと実装されるため、高品質の成果物が期待できるでしょう。
そのため、「完成品を受け取りたい」や「明確な成果物が必要」と考えている場合、請負開発は最適な契約形態と言えます。
受託開発や請負開発を発注・依頼する企業側のデメリット
ここまでは、受託開発・請負開発それぞれのメリットを紹介しました。
一方でデメリットもありますので、発注・依頼後に「知らなかった…」「見当違いしていた」とならないように必ず確認しておいてください。
受託開発のデメリット1.コミュニケーションの難しさ
受託開発におけるデメリットの一つに、コミュニケーションの難しさがあります。
開発業務を外部の受託会社に任せる場合、発注側と受託側で仕事の進め方に違いがあり、意思のすれ違いが発生しやすくなります。社内の状況や背景が伝わりにくいため、相談や確認に時間がかかる可能性も否めません。
相手は社外であるため、相性や信頼関係の構築が不十分なままであると課題や問題が発生しても把握しづらく、解決に遅れが生じることも考えられます。
こうしたリスクを防ぐためには、要件や目的を明確に伝える必要があり、定期的な確認や情報共有も重要です。
また、受託開発では社内との距離や外部者との関係性にも注意が必要で、円滑な進行のためには丁寧な連携が欠かせません。この点を意識して進め方を工夫することも必要です。
受託開発のデメリット2.自社のエンジニアの成長機会が減る
受託開発を外部の会社に依頼することで、自社のリソースを効率的に使える一方、社内エンジニアの成長機会が少なくなるというデメリットです。
受託側にシステム制作や技術的対応を委託するため、自社のシステムエンジニアやIT人材が開発に関わる機会が減少し、現場での経験やノウハウの蓄積がしにくくなります。
また、技術課題に対する試行錯誤や自力での対応力が育ちにくくもなり、人材育成の面ではマイナスになる可能性もあります。将来的に自社内で開発を進めたい場合や、IT分野の知見を社内に残したい場合には注意が必要です。
負担軽減は魅力ではあるものの、組織や個人としてのスキル成長をどう確保するかが課題になるため、長期的な視点で社内エンジニア育成とのバランスを取ることが重要になります。
受託開発のデメリット3.セキュリティリスク
受託開発を依頼する際にはセキュリティリスクへの注意が必要です。
外部に開発を任せることで、社内では管理できない情報のやり取りやシステム設計が発生するため、セキュリティ上の問題が起こる可能性があります。
特に、顧客情報や業務データなどを扱う場合には、運用・保守まで見据えたセキュリティ対策の徹底が必要です。
また、受託会社との間で秘密保持契約を結ぶだけでなく、自社のセキュリティポリシーに合わせた対策を講じてもらうことも重要です。社内と受託先の対策に違いがある場合はリスクが拡大するため、開発段階から管理体制の整備が欠かせません。
受託開発は便利な手段ですが、セキュリティリスクを軽視すると大きな問題に発展してしまう可能性も考えられます。委託先の選定や契約時の確認事項にも十分注意し、企業としての責任を果たせる体制を構築することが大切です。
請負開発のデメリット1.発注後の仕様変更が困難
請負開発においては、発注後の仕様変更が困難な点がデメリットです。
請負では開発の遂行にあたり「完成」をもって契約が成立するため、契約前に設計や仕様をしっかり取り決めることが重要です。仕様が曖昧なまま契約を結んでしまうと、後で必要な機能の追加や変更が発生した際に柔軟に対応してもらえないケースがあります。
また、請負会社は契約通りの成果物を納品する責任を負っているため、小さな仕様変更であっても、追加契約や費用が発生する可能性もゼロではありません。結果、想定外のコストやスケジュールの遅延につながる恐れもあります。
請負開発を活用する際は、契約前に詳細に要件を固め、仕様を明確にしておくことが成功へのカギとなります。そのためには、慎重な準備と設計が欠かせません。
請負開発のデメリット2.自社内に開発ノウハウを蓄積しにくい
自社内に開発ノウハウや知識を蓄積しにくいという点もデメリットです。
理由は、システムの完成を請け負う契約のもと、外部会社に業務委託する形態だからです。
請負会社は、契約に基づいてシステムを開発・納品することが目的であり、開発過程の詳細や判断の背景が社内に共有されないことも多くあります。
そのため、自社の担当者が開発の流れや技術的な選定理由を把握できず、将来的なシステム運用や改善に支障が出る可能性もゼロではありません。
開発に関する知識やノウハウが社内に蓄積されないと、同様のシステムを再導入する際にも外部委託に頼らざるを得ない状況になりがちです。
よって、長期的な視点で見たときには、自社にとって必要な技術や理解をどのように蓄積していくかが重要な検討ポイントとなります。
請負開発のデメリット3.会社によって品質にバラつきがある
請負開発では、成果物の品質にバラつきが出やすい点がデメリットとも言えます。
仕様が明確化されていても、制作や開発の進め方は会社ごとに差があるため、同じ内容の発注であっても品質が異なるケースを想定しておく必要があります。
請負では納品物の完成が契約上のゴールになりますので、工程中の品質管理や進捗共有が不十分な場合、期待通りの成果物で仕上がってこないリスクも考えられるのです。
こうしたリスクを避けるためには、単に費用や納期だけで外注先を選定せず、過去の実績や技術力・対応力なども含めて慎重に依頼先を見極めることが重要になります。よって、請負開発には、信頼できるパートナー選びが必要不可欠です。
受託開発と請負開発ではどちらの外部委託を選ぶのが最適?成功事例と共に紹介
ここまでは、受託開発と請負開発それぞれのデメリットを紹介しました。
次は、成功事例をもとに「受託開発と請負開発ではどちらが適しているか?」を解説します。
システム開発を外部委託する際、プロジェクトの目的や体制に応じてどちらを選ぶかが非常に重要ですので、ぜひご確認ください。
例1.製造業で在庫管理システムを導入する場合
製造業の企業で、従来のExcel管理では追いつかなくなった部品在庫の把握や出荷管理を効率化するため、自社業務に在庫管理システムの導入を検討していました。
しかし、現場の業務フローは部署ごとに異なり導入後も改善の余地が多いことから、開発最中に仕様変更しながら進められる体制が必要でした。
そこで、業務システムに強いSIer(システムインテグレーター)へ受託開発を依頼。
在庫の入出庫ロジックや棚卸作業の負担を軽減する機能などについて、現場担当者と開発エンジニアが何度も打ち合わせを重ねながら仕様を詰められたのです。
要件定義から設計・開発・テスト・導入・運用サポートまでを一気通貫で任せられたことで、運用に最適なシステムが完成。結果、棚卸作業の時間も半分以下に短縮でき、在庫誤差も大幅に減少するなど生産性の向上につながりました。
【POINT】
要件が完全に固まっていない場合や、開発途中での継続的な見直しが必要なシステム開発では、柔軟な対応が可能な「受託開発」が適しています。
例2.流通業で自社システムへ組み込む場合
流通業の企業では、法改正により取引先への請求書や納品書のフォーマット変更が義務付けられ、新しい様式で帳票出力機能をスピーディに自社システムに組み込む必要がありました。
実装すべき機能や画面仕様も明確に定義されていたため、外部の開発会社に「請負契約」で発注し、契約時に開発範囲・納期・成果物の仕様をきちんと明文化しました。
一ヶ月というタイトなスケジュールながら、要件通りの成果物が納期までに納品されスムーズに本番環境への反映に成功。帳票出力業務に支障が出ることもなく、法改正対応をスピーディかつ確実にクリアできたのです。
【POINT】
仕様が明確化されていて、短期間での成果物納品が求められる案件には「請負開発」が最適です。要件定義後の変更が少ない業務やスケジュール厳守の案件では、特に効果的と言えます。
受託開発・請負開発はシステム開発の目的に合った外注先に任せるのがおすすめ!
前項では、「受託開発と請負開発ではどちらの外部委託を選ぶのが最適なのか?」について、成功事例を用いて紹介しました。
続いては、ITオープン系・Web系・汎用系・組み込み系と4つのシステム開発に分けて、受託開発・請負開発ではどちらの外注先に任せるのがおすすめかを解説します。
目的や希望する進め方によって適している契約形態は異なり、結論から言うと…
- 要件が固まっていて納品物が明確な場合:請負開発
- 柔軟な対応が必要な場合:受託開発
が適しています。
システム開発を成功させるには、ニーズに合った外注会社への依頼が重要になりますので、ぜひ参考にしてください。
オープン系システム開発の場合
ECサイトの構築で、要件定義が曖昧な状態から仕様を詰めていく必要があったため、仕様変更が柔軟な「受託開発」を選択。
導入後はサイト訪問数の前年比増に成功し、売上アップにもつながりました。
一方で、業務効率化を目的とした販売管理システムでは、要件と仕様が明確だったため、短期間かつ低コストでの実装が求められました。
成果物に対する納品責任を明確にできていたことから「請負開発」を選択し、システム稼働後は業務工数の削減に成功したのです。
Web系システム開発の場合
あるECサイトの運営会社で商品レビュー管理システムの新規構築を「受託開発」で依頼。
要件が曖昧な部分も多く、開発会社と相談しながら要件定義~設計・開発・テストまでを進め、CVR(コンバージョン率)が改善した例もあります。
一方、社内ポータルのシングルサインオン機能の実装をするにあたっては、仕様が明確だったことから「請負開発」で依頼することに。テストを含めて実装が完了し、ログイン工数を削減させることに成功したのです。
汎用系システム開発の場合
在庫管理システムの刷新を依頼する際、要件が流動的だったため柔軟な対応が可能な「受託開発」で依頼。
開発会社が常駐しながら設計〜実装を進め、運用コストの削減につながった例もあります。
一方、給与計算システムの月次処理高速化は仕様が明確だったため、請負契約で開発を外注し、運用後に月次処理時間が大幅短縮された事例もあります。
組み込み系システム開発の場合
某家電メーカーが依頼したスマートエアコンの温度制御システムは、要件が変動しやすくユーザーの声を反映する必要があったため、柔軟性が高い「受託開発」を選択。
ユーザー満足度の高い制御機能が完成し、製品の差別化と市場での優位性の確立に成功したのです。
また、自動車部品メーカーによるECU制御モジュールの更新では、仕様が明確かつ短納期が求められたため「請負開発」で依頼することに。
運用開始後にエラー率の削減につながったという事例もあります。
受託開発や請負開発を利用する際の注意点は「相談するシステム会社探し」を失敗しないこと
ここまでは、システム開発を4ジャンルに分け、受託開発・請負開発のどちらに任せるのがおすすめかを解説しました。
続いては、受託開発・請負開発それぞれを利用する際の注意点である、「相談するシステム会社探し」について解説します。
受託開発を利用する場合の注意点
開発の目的や状況に応じた最適な会社選びをしないと、品質不足や納期遅延などの問題が発生します。
特に受託開発では、要件のすり合わせや仕様変更への柔軟な対応が求められるため、相談段階からしっかりとコミュニケーションが取れる会社を選ぶことが重要です。
また、担当者自身がシステム開発の知識に詳しくない場合があるため、丁寧に現状をヒアリングし、課題を整理してくれる開発パートナーが非常に心強い存在になります。
状況に合わない会社を選んでしまうと、プロジェクトの進行に支障をきたすケースも多いため、まずは信頼できる会社を選び、受託開発における注意点を理解した上で依頼を進めることが成功へのカギとなります。
請負開発を利用する場合の注意点
請負契約では、開発の成果物に対する責任は請け負った会社側にあるため、一見すると発注側の負担は軽く感じられます。
しかし、「仕様変更への柔軟な対応が難しい」や「納期遅延や品質問題が発生しても開発会社と調整しづらい」など、問題が発生するケースも少なくありません。
特に、要件定義が曖昧なまま進めてしまうと、後になって問題が表面化することも多いです。
そのため、開発の目的に応じて、信頼できる外部パートナーかどうかを見極めることが重要になります。相談の段階から誠実な対応をしてくれる会社かどうかを確認することで、後のトラブルを未然に防げるでしょう。
受託開発・請負開発それぞれの契約方法や流れの違い
前項では、受託開発と請負開発を利用する際の注意点「相談するシステム会社探し」について解説しました。
最後は、受託開発と請負開発それぞれの依頼~納品までの流れを解説します。
受託開発を依頼する場合の流れ
受託開発の契約方法や流れから見ていきます。
1.開発対象の明確化と社内状況の整理
まずはプロジェクトの目的や開発の対象範囲を明確化しましょう。
どのような課題を解決したいか、どの業務に活用するのか、社内の運用体制や予算、セキュリティ要件、導入後の活用方法なども含めて整理しておくことが重要です。
これにより、必要な機能や条件・納期・工数の概算が見えてきます。
2.受託先候補への相談と情報収集
次に受託開発を請け負う企業に相談し概要を共有します。
相談時に要件の詳細や想定する予算・スケジュールなども伝えると、相手から最適な提案が受けやすくなりますので、実績なども含めて比較検討することが大切です。
複数社比較して各社の開発の仕組みやコスト感を確認するようにしましょう。
3.見積り・契約の締結
開発会社と方向性をすり合わせたら契約を締結します。
契約を結ぶ際、納品物の定義・納期・スケジュール・料金・対応範囲・セキュリティ要件・納品後のサポート体制など、明確に定めることが成功へのカギです。 曖昧な条件のまま契約を進めてしまうとトラブルの原因になりますので注意しましょう。
4.開発の進行と定期的な確認
契約後はプロジェクトが定められたスケジュールに沿って進行します。
進捗確認や仕様変更などは慎重におこない、定期的な報告やレビューの機会を設けることで、納品物の品質と効率的な進行を確保できます。
5.納品・検収・運用開始
納品されたら検収(動作確認)をおこない問題がなければ完了です。
その後は社内で運用開始していきますが、使い勝手や導入効果の確認、必要に応じた改善提案の相談が大事になります。外注先のサポート体制が整っていることで、運用フェーズでも安心して任せられるでしょう。
受託開発を成功させるには、上記のようにステップごとで確認や選択を適切におこなうことが大切です。
自社にとって“意味のあるシステム開発”を実現するためにも、「発注前の準備」と「パートナー選び」は非常に重要な工程と思っておきましょう。
請負開発を依頼する場合の流れ
一方で、請負開発の流れは以下の通りです。
1.課題・目的の明確化と対象業務の整理
まずは、社内で解決すべき課題や導入の目的、プロジェクトの対象範囲を明確にします。
何を開発し、どのような運用を目指すのかを社内で共有しましょう。業務効率化やコスト削減などの目的を定めておくと、委託先との意思疎通がスムーズになります。
2.開発会社の選定・相談
次に、請負に対応している外部の開発会社をリサーチし、複数社に相談をおこないます。
各社のセキュリティ体制や実績、提供できるスケジュールや予算感などを比較し、自社と相性が良く、プロジェクトに最適な会社を選択します。詳細な条件や導入目的も共有することが大切です。
3.見積り・契約の締結
要件定義に基づいて、工数や納期・料金の見積もり・契約内容を調整します。
請負契約では、成果物の範囲や品質や納期を明確に定める必要があります。契約を締結する際は、万が一のトラブル時の対応や著作権、機密保持といった項目も確認しましょう。
4.設計・開発・テスト
契約後は依頼会社に設計・開発を実施してもらいます。
進行中も定期的な確認やレビューを通じて、仕様のブレを防ぐことが重要です。使わない機能の排除や、将来の運用を見据えた設計も依頼側からリクエストできます。
5.納品・検収・運用開始
開発が完了すると成果物が納品され、自社で検収をおこないます。
依頼通りに制作されていることを確認した上で運用を始めましょう。必要に応じて保守運用契約を結ぶケースも多く、スムーズな移行がプロジェクト成功へのカギです。
このように、請負開発は「完成責任」が契約の基本となるため、状況に応じて最適なスケジュール管理や相性のよい開発パートナーの活用が成功のポイントとなります。
発注前の段階で条件を明確にし、詳細まで確認して進めることが、開発を効率的に進めるためには大切です。
受託開発と請負開発の違いまとめ
今回は受託開発と請負開発の違いについて解説しました。
システム開発を外部に依頼する際、受託開発と請負開発の違いを理解することは重要です。受託開発は委任契約に近く、柔軟な対応が可能な一方、請負開発は成果物に対する責任が明確で品質管理がしやすいという特徴があります。
それぞれにメリット・デメリットがあり、プロジェクトの目的や体制によって最適な選択肢は異なります。契約形態や開発の進め方にも違いがあるため、事前確認は必要不可欠です。
自社に最適な開発パートナーを選定し、円滑なプロジェクト推進を目指しましょう。
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一括の大型システム開発からプロジェクト単位の開発と規模も問いません。
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